投資の世界で最近よく耳にする「ETF(上場投資信託)」という商品をご存知でしょうか?ETFは初心者でも取り組みやすいとされる投資商品の一つです。本記事ではETFの基本的な仕組みや投資信託との違い、メリット・デメリット、代表的なETFの例、購入方法などを初心者向けにやさしく解説します。

ETFとは何か(定義と仕組み)

ETFは「Exchange Traded Fund(エクスチェンジ・トレーデッド・ファンド)」の略で、日本語では「上場投資信託」と呼ばれます。簡単に言えば、証券取引所に上場していて株式のように売買できる投資信託のことです​。

投資信託とは多数の投資家から集めた資金をまとめて運用するファンドですが、それを証券取引所で株式と同じように取引可能にしたものがETFです。ETFは通常、日経平均株価やS&P500など特定の株価指数(インデックス)に連動するように設計されており、一つのETFを買うだけでその指数に含まれる多数の銘柄に分散投資できます​。

またETFには株式と同様に銘柄コード(ティッカー)が付与され、市場が開いている間は価格がリアルタイムに変動します。これらの特徴から、ETFは投資信託と株式の「いいとこ取り」をしたハイブリッドな金融商品とも言われます​。

ETFは欧米で特に人気が高く、イギリスの金融紙フィナンシャル・タイムズでは「過去15年間で最も成功した金融商品」と評されたこともあります​。

近年は日本でもETF市場が急成長しており、2011年に約2.7兆円だった国内ETFの残高が2020年末には50兆円を超える規模に拡大しました​。

投資信託との違い

ETFは基本的に投資信託の一種ですが、通常の公募型の投資信託(非上場の一般的な投資信託)とはいくつか異なる点があります。主な違いとして、取引できるタイミングと価格の仕組み、そして手数料などコスト面の2点が挙げられます。

  • 取引タイミングと価格: 公募投資信託では基準価額(価格)が1日1回しか計算されず、注文しても実際にいくらで約定するかはその日の終値で決まります。一方、ETFは証券取引所の取引時間中であれば価格が常に変動しており、株式と同様にリアルタイムで売買できます​。好きな価格で指値注文を出すことも可能なので、より柔軟に取引タイミングを計れる点が特徴です。
  • コスト面: 公募投資信託には購入時に販売手数料(購入時の手数料)がかかる商品が多く、保有中も信託報酬(運用管理費用)というコストが日々差し引かれます。一方、ETFの場合、購入時の販売手数料は不要で証券会社への売買手数料だけで取引できます。また運用管理費用である信託報酬も、一般的に同じ指数に連動する投資信託より低く抑えられていることが多く、長期的にもコストメリットがあります​。

初心者にとってのメリット

ETFには、初心者にとって嬉しいさまざまなメリットがあります。ここでは主な利点をいくつか紹介します。

  • 手軽に分散投資ができる: ETF一つで多数の銘柄に投資できるため、簡単に分散効果を得られます。例えば日経平均株価に連動するETFを1口買えば、日本の代表的な225社すべてにまとめて投資したのと似た効果となり、リスク分散によって値動きも個別株に比べ安定しやすいというメリットがあります。
  • 運用コストが低い: ETFは指数に連動するパッシブ運用が中心であるため、信託報酬(年間の運用管理コスト)が低めに設定されています​。また前述のように購入時の販売手数料も基本的にかからないので、余計なコスト負担を抑えて効率的に資産運用ができます。
  • 少額から購入できる: ETFは銘柄にもよりますが、数千円〜数万円程度から購入可能なものが多くあります。例えば東京証券取引所に上場しているETFの中には1口1万円以下で買える商品も存在し、まとまった資金がなくても投資を始めやすいです​。少ない資金で幅広い銘柄に投資できるのは、初心者にとって大きな魅力でしょう。
  • 売買のしやすさ: ETFは取引所でいつでも売買できるので、必要なときにすぐ換金(売却)しやすい流動性の高さがあります。平日で市場が開いている時間帯であれば、リアルタイムで価格を見ながら好きなタイミングで売買が可能です​。

ETFの注意点・デメリット

ETFは便利でコストも低く、初心者にとって魅力的な商品ですが、いくつか注意しておくべき点やデメリットもあります。

1. 株式市場が開いている時間でしか売買できない

ETFは株式と同様に取引所で売買するため、基本的に平日9時〜15時の取引時間内でしか売買できません。これは通常の投資信託(いつでも申し込み可能)とは異なります。サラリーマンや日中忙しい人にとっては、タイミングを見て売買するのがやや難しい面もあるでしょう。

2. 売買手数料がかかることがある

ETFは購入時に販売手数料がかからないのが特徴ですが、証券会社によっては**売買手数料(取引手数料)**が発生します。最近ではETF売買手数料が無料の証券会社も増えていますが、取引回数が多くなるとコストも増えてしまうので注意が必要です。

3. 配当金の再投資が自動で行われない

ETFによっては**配当金(分配金)**が出ることがありますが、通常の投資信託と違い、ETFではその配当金が自動的に再投資されることはありません。分配金を再投資したい場合は、自分で再度ETFを買いなおす必要があります。

4. 一部のETFには流動性が低いものもある

人気のないETFや取引量が少ないETFは、**売買が成立しにくい(板が薄い)**ことがあります。そうしたETFを購入してしまうと、売りたい時に思うような価格で売却できなかったり、値動きが大きくなってしまったりすることがあります。なるべく流動性の高い、有名なETFから始めるのが無難です。

初心者におすすめの代表的なETF

ETFには国内外を含めて非常に多くの商品がありますが、ここでは特に初心者に人気の高い代表的なETFをいくつか紹介します。

【国内ETF】

1. iシェアーズ・コア 日経225 ETF(1329)

  • 概要:日経平均株価に連動するETF
  • 特徴:日本を代表する225社にまとめて投資可能
  • 信託報酬:年0.16%程度

2. MAXIS トピックス上場投信(1348)

  • 概要:東証一部全体をカバーするTOPIXに連動
  • 特徴:分散性が高く、日本全体の経済成長を捉えやすい
  • 信託報酬:年0.078%程度

【海外ETF】

3. SPDR S&P 500 ETF(SPY)

  • 概要:アメリカのS&P500指数に連動(米国ETFの代表格)
  • 特徴:AppleやGoogleなど米国主要企業に投資できる
  • 信託報酬:年0.09%程度

4. Vanguard Total World Stock ETF(VT)

  • 概要:全世界の株式市場に投資するETF
  • 特徴:これ1本で先進国も新興国もカバーできる
  • 信託報酬:年0.07%程度

※海外ETFを購入するには、外貨決済や為替リスクに注意が必要ですが、世界分散投資を1本で実現できるVTは特に人気があります。

実際の始め方:ETF投資をスタートするには?

ETFに投資を始めるには、以下のステップで簡単に始められます。

1. 証券口座を開設する

まずは証券会社で口座を開設しましょう。おすすめのネット証券は以下のとおりです:

  • 楽天証券(楽天ポイントでの投資も可能)
  • SBI証券(ETFの取り扱いが豊富)
  • 松井証券(シンプルで初心者に優しい)

口座開設には、本人確認書類とマイナンバーカードなどが必要です。スマホで完結する証券会社も増えています。

2. ETFを検索・選択する

証券口座を開いたら、ETFの銘柄コードや名称で検索し、購入したい商品を選びます。銘柄ごとに「信託報酬」や「連動する指数」、「売買価格」などが表示されるので、内容をよく確認しましょう。

3. 購入数量・価格を設定して注文

ETFは「株式」と同じように、成行(なりゆき)注文・指値注文が可能です。1口単位で注文できるため、少額から投資を始めることができます。

4. 定期的にチェック・積み立てる

ETFは自動積立設定ができないものが多いため、自分で毎月一定額を買い増す「セルフ積立」が基本です。リスクを抑えるために、毎月一定額を定期的に買っていく「ドルコスト平均法」の考え方を取り入れると良いでしょう。

まとめ:ETFは「手軽に分散投資したい人」の味方

ETFは「少額」「低コスト」「分散投資」「リアルタイム売買」など、多くの魅力を備えた投資商品です。個別株のように企業分析を行わなくても、指数全体に投資できるので、初心者でも始めやすいのが特徴です。

ただし、取引時間の制限や配当再投資の手間など、ETF特有の注意点もあります。それらを理解したうえで、自分に合ったETFを選ぶことが大切です。

資産形成の第一歩として、ETFという選択肢をぜひ活用してみてください。始めは1万円程度の少額からでも十分です。まずは「投資に慣れること」から始めてみましょう。

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