この冬、全国各地の農家から悲鳴が聞こえてきます。
「せっかく育てたブロッコリーがヒヨドリに食べられた」
「キャベツの葉がボロボロで出荷できない」

そう、今、私たちの身近な野菜たちが、意外な“犯人”ヒヨドリによって食い荒らされているのです。

ヒヨドリってどんな鳥?

ヒヨドリ(学名:Hypsipetes amaurotis)は、スズメ目ヒヨドリ科の鳥で、日本全国に広く分布しています。
灰色がかった体に、特徴的な「ヒーヨ、ヒーヨ」という鳴き声。まさに名前の由来通りですね。

都会でもよく見かけるこの鳥は、実は渡り鳥。夏は北海道、冬は九州・四国・本州南部に移動します。その行動範囲は、なんと日本列島を縦断!

なぜブロッコリーを食べるの?

ヒヨドリは雑食性で、木の実、花の蜜、昆虫、そして冬場には人間が育てた野菜までも食べます。
もともと自然の中で食べていた餌が、都市化で減ったため、食べ物を求めて畑にやってくるようになったと考えられています。

つまり、ヒヨドリが悪いわけではなく、「自然と人間の生活圏がぶつかり始めている」ことの表れなんですね。

都市と野生の境界線があいまいに?

ヒヨドリの行動は、私たちにひとつの問いを投げかけます。

「自然はどこに行ったのか?」

かつて野山にあった果実や昆虫が減り、代わりに人間の作る畑や街路樹が新たな餌場になっている。つまり、ヒヨドリにとっては「そこに食べ物があるから食べる」だけのこと。

都市化や農地の拡大は、人間にとっては便利な発展でも、生き物たちには環境の激変です。

野菜が高くなる?見えない被害の連鎖

ヒヨドリが食べるのは、主に野菜の新芽や柔らかい葉の部分。特にブロッコリーやキャベツのような葉物は格好の標的です。
この被害、農家にとっては死活問題。出荷できる量が減れば、当然市場に出回る野菜の量も減ります。

その結果として考えられるのが──

  • 野菜価格の高騰
    特に冬から春にかけての時期は、葉物野菜が高騰しやすい傾向にあります。ヒヨドリ被害が重なることで、価格上昇が加速する可能性があります。

  • 飲食業界への影響
    レストランや給食施設など、野菜を大量に使う現場では、仕入れコストの増加やメニュー変更もありえます。

  • 家庭の食卓が寂しくなる?
    「今日はサラダをやめて、漬物にしようか」なんて会話が現実に。いつもの野菜がいつもの値段で買えない日が来るかもしれません。

ヒヨドリは“悪者”か?生態系のバランスに注目

ヒヨドリは、ただ食べ物を探しているだけ。問題の本質は「食べ物が自然に少なくなっていること」にあります。
都市化、気候変動、森林伐採……。私たち人間が築いてきた便利な暮らしが、野生動物たちの食のバランスを崩しているとも言えるのです。

つまり、ヒヨドリが畑に現れたのは「彼らの餌場が失われたから」であり、「私たちの暮らしと自然の距離が近くなっている証拠」なのです。

農家の対策、そして私たちにできること

多くの農家ではすでに、

  • 防鳥ネットの設置

  • 音や光による追い払い

  • 鳥が嫌がる植物を周囲に植える

などの対策が取られています。ただし、これにもコストがかかるため、農家の負担は決して軽くありません。

私たち消費者にできるのは、「少し高くても国産野菜を選ぶ」「フードロスを減らす」「農業の現状に関心を持つ」など、日常の中でできる小さなアクションです。

まとめ:ヒヨドリが教えてくれる“自然との距離感”

ブロッコリーやキャベツを食べるヒヨドリは、ただの害鳥ではありません。
その存在は、今まさに崩れつつある生態系のバランス、そして人と自然との境界が薄れつつある現実を象徴しています。

もしスーパーで「ちょっと高いな」と感じる野菜があったら、思い出してみてください。
畑の向こうで、農家とヒヨドリの静かな戦いが続いていることを。

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